真冬の開業と試行錯誤の日々
「温泉ゲストハウスやすもり」の開業当日は雪が降っていたそうです。
「実は開業するまで、冬の温泉郷がどんな状況なのかわかっていませんでした。普通であれば最低でも1年ぐらいは周辺の環境を観察して計画を練れれば良かったのですが、何せ独立したい!という気持ちだけが先走っちゃって……笑
11月の中旬くらいから雪が降っていたので、ある程度覚悟はしていたつもりでしたが、想像以上でした。温度管理や除雪、掃除、お客さんの迎え入れや対応など時間のやりくりが全くわからず、毎日が不安で気が休まる日はありませんでした。日々手探り状態だったので、毎日試行錯誤と気づきの連続でした」
徐々に増えるリピーター
ラウンジの様子開業当初は、冬季休業するかなど色々悩んだと言います。しかし1年目を乗り切り2年目に入ると、徐々にリピーターのお客さんが来ていただけるようになりました。
「最初、お客さんが来ないのでは?という心配はありました。ただ、一度来てもらったら、例えば100人に1人くらいはここでも良いのでは?と感じていただけるお客様はいると、自分の中で根拠のない自信はありました。2年目を迎えた頃から口コミも徐々に増え、一度来られた方が次のシーズンにまた来てくださったり、最初はお一人で来られた方が次は家族でいらっしゃったりと、徐々に客足が伸びて。冬期営業を続ける気持ちが徐々に固まっていきました」
大切にしているアットホームな距離感
インタビュー中も、常にリラックスした様子の永本さん。接客の際にも心がけていることを伺うと” アットホームな距離感”というキーワードを挙げられます。「私が大事にしているのは、お客さんとの距離感です。”自然体で接すること”と”居心地の良さ”を一番気にかけています。理想は気楽に話しかけられるようなアットホームな距離感。嬉しいことに口コミにも”アットホームなところが良い”と書いてくださるお客様もいらっしゃいます。
海外でゲストハウスを利用したことがある方を除き、日本の方の大半はゲストハウスに対してイメージが湧かないと思います。ホテルや旅館と違い、ゲストハウスってどういうオーナーが接してくるかもわからないし、どういうシステムかもよくわからないので不安がいっぱいだと思います。こちらからさりげなく一声かけるだけで安心感が違いますし、それがちょっとした気遣いかなと思っています」
自然体を心がける理由
「温泉ゲストハウス やすもり」を巡ると、欲しいところにレンジが置いてあったり、ゴミ箱があったりとさりげない気遣いが行き届いていることを感じます。永本さんの距離感を大事にする接客スタイルの背景には、自分自身が体験したことが活かされていました。
「オーナーやスタッフがグイグイ声をかけてきたり、マニュアル通りの対応をされることは、自分はあまりやってほしくはないです。人はその時の気分で喜怒哀楽が変化します。接客で大事なのは、最低限のマナーとマニュアルにはないその場での臨機応変な対応(アドリブ)だと私は思っています。
人と人が会話をし、仲良くなり近づくことに、そもそもマニュアルは必要ないと個人的には思いますので、ポリシーは「自然体」。お客さんもこちらも自然体。過剰なサービスはお互い息が詰まると思うのでしたくないですね。心と心が通じ合えばいいんです」
実体験や経験・動向などを分析し、自分にしかできないオリジナリティーを追求する中で生まれた接客ポリシー。永本さんの”自然体でざっくばらんな接客スタイル”に惹かれるお客さんは多いです。
「営業の経験もあるので、話そうと思えば自分からは話すことはできます。ただ、日本人は結構内気な方もいらっしゃって、話しやすい雰囲気をこちらが作ってあげないと、話を切り出せない方も多いです。そんな中でこちらがかしこまってしまうと、お客さんも恐縮して、ますます話しにくくなってしまう。
だから自分も自然体で。かしこまらず、こわばらず、めんどくさがらず、 やるべきことはやって、話しやすい雰囲気づくりが大事かと。もちろん、話したくない方には無理に話したりしません。人によって距離感やその日の気分は違いますので、お客さんが今一番居心地が良いと感じる距離感で、人と人との交流ができることを目指しています」
日本人のお客さんが多い
開業当初は海外の方が多いのではないかと予測していたそうですが、実際には9割以上が日本の方だそうです。「ゲストハウスと付いているので、海外の方が多いと誤解されることもありますが、実際は日本の方が多いです。気兼ねせず、アットホームな雰囲気を今も大事にしていますので、気軽にお越しいただければと思います。」
次回は開業から3年目を迎えた永本さんの考えをお伺いします。
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