第5回「事業報告会〜八幡平市の地熱のこれまで・いま・これから〜」のようすを紹介!

 第4期沸騰地熱塾第5回

「事業報告会〜八幡平市の地熱のこれまで・いま・これから〜」

第4期沸騰地熱塾の第5回「事業報告会〜八幡平市の地熱のこれまで・いま・これから〜」が2/11(祝・木)に開催されました。

第5回は、2部構成です。第一部は今年度の取組報告、第二部はパネルディスカッションが実施されました。

チラシはコチラ↓


当日のようす

今期は、オンライン開催も実施してされています。参加者は、47名(会場29名、オンライン18名)でした。当日の様子を抜粋してお伝えします。

当日のプログラム

開会挨拶 八幡平市長 田村正彦氏

第一部取組報告

「松川地熱発電所の発電設備更新」東北自然エネルギー株式会社 安達氏

「地元貢献策の状況報告」岩手地熱株式会社 高橋氏

「安比地熱発電所建設工事状況」安比地熱株式会社 谷下田氏

「令和3年事業計画と今後の展望について(今までの課題等をふまえて)」株式会社地熱染色研究所 髙橋氏

「地熱活用・温泉熱活用による馬とマッシュルーム」ジオファーム八幡平 船橋氏

「岩手県・八幡平市 IoT次世代施設園芸事業 熱水ハウスについて」株式会社MOVIMAS 兒玉氏

「暁ブルワリーの取組み」株式会社太極舎 暁ブルワリー(事務局より報告)

「地域密着型授業『地域観光実践』の報告」I-Attract.  鈴木氏・平舘高校 家政科学科3年生

「平舘高校地熱探検隊報告」平舘高校2年生

第二部 パネルディスカッション

「八幡平の地熱のこれまで・いま・これから」

閉会挨拶 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 髙橋氏

第一部:取組報告

田村八幡平市長の開会の挨拶の後で、第一部の各事業者等による今年度の取組報告が行われました。内容を抜粋してお伝えします。

「松川地熱発電所の発電設備更新」
東北自然エネルギー株式会社 安達氏



昭和41年から運転を開始した日本初の商用地熱発電所である松川地熱発電所の歴史をご紹介いただき、今後予定されている更新計画についてお話いただきました。

再生可能エネルギーの中でも地熱発電は、天候に左右されずに安定的に発電することが出来るベースロード電源としてのポテンシャルがあります。松川地熱発電所は、老朽化が著しく、また地下には今後も利用できる豊富な地熱資源があることなどから、既存の蒸気生産設備を活用した最適な発電設備への更新が決まりました。さらに50年間安定して発電できるように、出力はこれまでの23,500kWから約14,900kWにする予定です。また松川のシンボルと呼ばれている自然通風式の冷却塔(高さ46m)は、コンパクトな強制通風式(高さ約18m)となります。新設工事の開始時期は令和4年、運転開始時期は令和7年を予定しています。

発電所の配置計画も発表され、50年以上の長きに渡り地熱発電を支えてきた松川発電所が、新しい歴史を刻み始めることを実感する発表でした。

「地元貢献策の状況報告」
岩手地熱株式会社 高橋氏


高橋氏はオンライン参加され、主に岩手地熱株式会社が地元にどのような貢献をしているかを中心に、取り組みをご紹介いただきました。

一番大きい地元貢献は「電力の地産地消」です。設備能力では7,499kW、送電端は7,000kW。これは、一般家庭約15,000世帯の消費電力に相当する電力です。計算上は八幡平市の全世帯分の電力を賄える量を発電していることになります。

他にも、税金・雇用・外注業務などで地元貢献をしていることをお話いただきました。

「安比地熱発電所建設工事状況」
安比地熱株式会社 谷下田氏


八幡平市の3番目の地熱発電所として現在(2021年時点)建設が進めらている安比地熱発電所についてご紹介いただきました。

2000年度〜2003年度に行われたNEDOによる地熱開発促進調査により、安比地域に有望な地熱資源の存在が明らかになりました。これにより、2019年8月には安比地熱発電所の工事が着工し、2024年4月の運転開始を目指しています。安比地熱発電所の事業目的はCO2排出量の少ない電力の安定供給に貢献することです。また、環境への影響を最小限にする為に、コンパクトな設計をしています。運転開始は2024年4月予定です。

「令和3年事業計画と今後の展望について(今までの課題等をふまえて)」
株式会社地熱染色研究所 髙橋氏


髙橋氏より、まず八幡平地熱蒸気染色とは何かについて紹介がありました。

八幡平地熱蒸気染色とは、八幡平に噴出する地熱蒸気を利用した色の変化を楽しむ染色方法です。松川の地熱蒸気には、微量の硫化水素が含まれており、その脱色作用によって余分な色が抜け奥行きのある独特の多色グラデーションが実現します。今年度は、COVID-19の影響を受けて染色体験教室に参加する団体客が減って個人のお客様が増えています。この機会に、蒸気の配管などの設備の更新を計画しています。また今後の展望としては、情報発信にも力を入れていき、より多くの人に訪れて欲しいと考えています。

「地熱活用・温泉熱活用による馬とマッシュルーム」
ジオファーム八幡平 船橋氏



船橋氏は、ジオファーム八幡平より中継でご出演いただきました。

ジオファーム八幡平では、馬とマッシュルームをベースとして、引退競走馬と人との持続可能な環境づくりを目指しています。八幡平南温泉旭日之湯の温泉熱を利用したマッシュルームのハウス栽培に取り組み、北東北唯一のマッシュルーム生産農場として認知されています。栽培が難しいため生産量が落ちた時期もあったが、他のマッシュルーム農家のノウハウを教えてもらうことで、安定した生産ができるようになり、事業を開始した2015年当時は18トンであった生産量が、2020年には80トンになりました。

2020年9月には「八幡平マッシュルーム」が地域団体商標へ登録されます。地域と使っていただいている皆様のおかげで一般名称(八幡平)と一般名称(マッシュルーム)の組み合わせの商標が認められました。

特別にライブ映像でハウスの中の様子等が紹介され、臨場感あふれる現地レポートで参加者たちを惹きつけていました。

「岩手県・八幡平市 IoT次世代施設園芸事業 熱水ハウスについて」
株式会社MOVIMAS 兒玉氏


兒玉氏はオンラインでご参加をいただき、主に事業の進捗と今後の展開についてお話いただきました。

株式会社MOVIMASは、IoT/M2Mのマーケティング・セールス支援等を行う会社です。八幡平市と株式会社MOVIMASが推進するIoTを活用した「スマートファームプロジェクト」を本格的に事業拡大する為に、2019年2月に農地適格所有法人「株式会社八幡平スマートファーム」の操業を開始しました。

八幡平スマートファームでは、スマート農業によるバジルの栽培を行っています。今年度はIoT次世代施設熱水ハウスとして12棟を設立。バジルは、農産物では初となるハローキティーとのコラボレーションパッケージで販売されており、地元の松っちゃん市場でも取り扱いが始まっています。また、肉の横沢でバジルソーセージを商品開発し、ふるさと納税の返礼品に加わるなど、地域の皆さんと連携をしながらバジルの普及を進められたと考えています。

農水省からの視察を受け入れるなど、八幡平の熱水ハウスはますます注目を集めてきています。八幡平IoT次世代施設園芸事業の熱水ハウスでは現地点ではバジルの栽培に力を入れていますが、今後は地域のプロモーションにも力を入れていきたいと考えています。地元の良いものを結びつけるハブの必要性を感じているので、地元の企業と一体となって、食と観光のコラボレーションで八幡平の魅力的な資源を認知させていきたいです。

「暁ブルワリーの取組み」
株式会社太極舎 暁ブルワリー(事務局より報告)


当日は事務局よりスライドを用いて紹介が行われました。

2020年9月8日に暁ブルワリー八幡平ファクトリーが開業しました。現在は缶ビールをメインとして4種類のビールを醸造しています。金沢清水や有機麦芽を用い、地熱エネルギーを活用してオーガニックビールを醸造している環境に負荷の少ない循環型ブルワリーです。再生可能エネルギーの地産地消として、ビール醸造の電力の99%は地熱発電を活用しています。

発売されている缶ビールは八幡平の郷山に敬意を表し、ドラゴンアイと名付けました。現在、ふるさと納税にもラインナップされています。「人に自然にやさしく」をコンセプトに、八幡平の新しいローカルビールとして、活動しています。

「地域密着型授業『地域観光実践』の報告」
I-Attract.  鈴木氏・平舘高校 家政科学科3年生


コーディネーターの鈴木氏より経緯が伝えられ、平舘高校の家政科学科3年生が詳しい取り組みを紹介しました。

平舘高校の地域密着型授業『地域観光実践』は、もともとは地熱塾と関係がないものでしたが、昨年の事業報告会で取り組みを紹介したところ、今年度はJOGMECに支援していただき授業を展開できました。地域観光実践は、2年時に地域の観光資源などについて学び、3年時に実践を行います。今年度の、実践の授業のコンセプトは「八幡平の魅力をインプット&アウトプット」です。

平舘高校の家政科学科3年生が今年度の実践内容について発表。今年度は、八幡平市の焼走り熔岩流をモチーフにした「熔岩パン」の開発、八幡平地熱蒸気染色の体験、八幡平地熱蒸気染色を活かした「タブレットケース」の作成を行いました。タブレットケースは、地熱染のオリジナリティーを活かしながら、機能性を重視したデザインを考えました。販売等に活用するチラシやパッケージの制作にも取り組み、今後、鈴木氏に託してネット販売をする予定です。


平舘高校生が商品開発したタブレットケース

また、平舘高校には家庭クラブがあり、家庭クラブ東北大会へと進んでいることが鈴木氏より紹介されました。今年度は、海洋プラスチック解決のための取り組みを実施しています。

「平舘高校地熱探検隊報告」
平舘高校2年生


平舘高校2年生の有志より、地熱探検隊の取り組みが報告されました。

地熱探検隊の目的は「地元の高校生が、八幡平市の資源(宝)である地熱や地熱活用産業を知り、学び、地域の良さや特色に気づくことで、持続可能なまちづくりを次世代へ引き継いでいく」ことです。今年度は、株式会社八幡平温泉開発の方にお話を伺い、引湯管の構造や清掃方法についても模型で学びました。松川地熱発電所では地熱発電の仕組みや歴史を学び、八幡平スマートファームではIoT技術と地熱を活かした産業について学びました。八幡平市の資源を活用する事業が、どんどん広がって欲しいという気持ちが高まりました。

最後には、新しく作られた平舘高校のポスターやマスコットキャラクター平丸の紹介もありました。

休憩を挟んで第二部です。


休憩時間中は、会場の後方に設置された展示ブースで、発電のデモンストレーションなどが行われていました。

第二部:パネルディスカッション

「八幡平の地熱のこれまで・いま・これから」


パネルディスカッションには、I-Attract.の鈴木氏、株式会社八幡平温泉開発の田中氏、田村八幡平市長がパネラーとして参加。古川氏の進行のもと、活発なパネルディスカッションが行われました。それぞれの立場からこれまでのこと、現状、そしてこれから取り組みたいことなどについて議論し、最後はオンライン参加の東北大学名誉教授 中島先生、第1回で講師を務めた同東北大学名誉教授 新妻先生よりコメントをいただきました。

中島先生「今回の議論を通して、多様な資源を結び付けて発展する段階に来ていると思いました。それぞれの取り組みを全体的にまとめるようなキーを打ち出しても良いのではないでしょうか」

新妻先生「今日の皆さんの話をきいていると、元気・夢・達成感などが湧いてきます。地熱というのは発電に活用できるだけではなく、産業にも結びつくトータルな存在です。私としては、八幡平市に暮らす若い人たちも地熱事業に関わっていることにより期待感が高まりました」

オンラインで参加した新妻氏

閉会の挨拶

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 髙橋氏


JOGMECが実施する「地熱活用のモデル地区」の支援事業として、沸騰地熱塾、地熱探検隊、平舘高校の授業等を行ってきました。またその一方で、オーラルヒストリーとして地熱データブックの取りまとめを行っている最中でもあります。地熱データブックは、今後の観光や地元の方・若い世代の学習に活かしていく予定です。発信のコンテンツとしても利用できるものになるのではないかと切に感じています。来年度も引き続き、皆様のご協力をお願いいたします。


今回をもちまして、第4期沸騰地熱塾が終了いたしました。先人のアイディアから始まった地熱発電が発展し、現在でも地元の「暮らし」や「産業」等に活かされていることを多角的に捉えることができる重厚な期だったのではないでしょうか。過去を学び、現在に活かし、未来を見据え、新しい取り組みも始まっています。今後も八幡平市の地熱にご注目くださいませ。

※この記事は沸騰地熱塾より転記しました。