「農家の方のECサイトにも、力を入れていきたい」 ー自分を見つめ直せる環境を求めて移住ー


「パンクでギャルな私が、八幡平市でどう生きていくのか、自分でも楽しみです」

と話すのは「ひまわりガーデン」に勤めている草間彩乃さん。様々な仕事を経験したのち、現在は農園で働いています。

八幡平市に来るまで農業未経験だった草間さんが、どんな出会いを経て八幡平市で農業女子として暮らしているのか。お話を聞きました。

自分を見つめ直せる環境に住みたいと思った

草間さんは神奈川県出身。保育士の資格を取得し大学を卒業してから、数多くの仕事を経験します。

「めちゃくちゃ色々な仕事をしました。印刷会社で働いたり、ECサイトの更新を行っていたこともあります。

1番長く携わっていたのは障がい児福祉です。障がいのあるお子さんの福祉施設や放課後等デイサービスで働きました。個別支援学級に通っているお子さんで、例えば放課後は保護者の方がお仕事に出ていたりして、何したらいいのか漠然としちゃって分からないという子の支援が1番長いですね」

大学卒業後、6・7回くらい引っ越しをし、1つの町に落ち着けなかったそうです。神奈川県や東京都の街を転々とするなかで、都会の暮らしに疲れていることを感じ始めたと言います。

「実は岩手への移住に対して明確な目的があったわけではありませんでした。ちょっと都会の暮らしに疲れてしまって。自分を見つめ直せる環境に住みたいなって思ったことが始まりです。行き先を検討している時に、お世話になっている方から、安比高原のことを紹介いただきました。風景や環境など、私自身がすごく気に入ったので、八幡平市が気に入ったというよりは最初は安比高原が気に入ったことからスタートしましたね」

新緑の安比高原

移住する前は、頻繁に岩手にきていたわけではありませんでした。

「長期滞在の経験はなかったです。岩手の観光がてら平泉の中尊寺に行ったり、安比高原に来たり。短期の旅行ですね。逆に引っ越してきてからは、観光らしい観光をしていないです。住む場所も紹介いただいて、引っ越しを決めること自体は早かったのですが、いざ日程が近づいてくると“本当に移住するのか”とか、“まず自分を受け入れてくれるのかな”っていうところからドキドキしてしまって。最終的にノリで来ました」

感覚が鋭い分、衝動で生きてきたと語る草間さん。ノリの良さも手伝って、八幡平市で暮らし始めます。

人のゆかりで農業の仕事に出会う

今回のインタビューでお話を聞いた場所は『高原の珈琲工房 NELCAFE』。草間さんも大好きだと言います。

「移住してからたくさんの人に会っています。軸になっているのは『高原の珈琲工房 NELCAFE』です。移住してからオーナーの方と知り合って、地元の方をご紹介いただきました。今は、毎日のように知り合いとか友だちが増えていっています」

現在働いている農業の仕事に出会ったのも、人のゆかりで紹介してもらったことがきっかけでした。

「私の場合、昔から農業をやりたかったわけではなかったのです。来てみて、ご紹介いただき縁があった仕事の一つが農業でした。農業の仕事をすることに抵抗は全くなかったですね。亡くなった祖父母が畑をずっとやっていて、小学生の頃はずっと帰ったら土仕事をしている祖父母の姿を見たり、自分も畑を手伝う環境にあったので。専業農家ではありませんでしたが、自分たちが食べる用の野菜を育てる環境は身近でした。私は都会で暮らしていましたが、虫とか平気です。土で手が汚れることも大丈夫でした」

農家の仕事を手伝う中で、現在(2020年7月時点)は、八幡平市の『ひまわりガーデン』で働くことに落ち着きます。

ECサイトを立ち上げ、運営にも注力

農業を学びながら、特に力を入れているのは新しく立ち上げたECサイトの運営です。ひまわりガーデンでは、草間さんが来てからECサイトを開設しました。

「農業を学ばせていただいている中で、私が力になれることは何かを今もずっと考えています。一つの答えとして、ECサイト(※1)に携わってきた経験が活かせるのではないかなと思っています。産直だけだと、どうしても販路が狭くなるので、ECサイトを導入することで、農家さんの販路拡大をしたいです」

※1:ECサイトとは、インターネット上で商品の販売を行うWebサイトのこと

草間さんは農業の仕事と合わせて、ECサイトを企画し、2020年8月に新しくオープンさせました。その他に、SNS運用にも乗り出しています。

「SNSとしては、InstagramとFacebookはもちろん大前提でやるとして、あとはnoteでレシピの紹介を企画しています。ECサイトのプラットフォームはBASEを利用していますが、noteとBASEは連携できるので相乗効果を生み出せる可能性が高いですから」

積極的にECサイト運営などに注力する背景には、純粋なおいしさへの感動がありました。「すごい売りたい」とキッパリ言い切ります。

「単純においしいから広めたいです。全く味が違うんですよ、ひまわりガーデンで採れる食材って。“同じ野菜でもこんなに違うの?”と思いました。都心に住んでいたい時に食べていた野菜は、SF映画の『ブレードランナー』に出てくるウレタンブロックに食べ物のホログラムがついたものを食べていたのかなって思うぐらい、全く味が違う。

岩手に観光に来た時も少し思っていたのですけど、今、農園で仕事をして、帰りにいくつか野菜をいただくこともあって。実際に家で食べると、何の手も加えていない洗っただけのお野菜がすごくおいしい。特に生野菜がとてもおいしいです。野菜それぞれで色もハリも皮の固さも実の柔らかさも、段違いだと思いますね。だからこそ、知らない人、まだ気づいていない人に、伝えたいと強く思います。

その手段が私の場合、ECサイトだったり、SNSですね。まだまだ農業のテクニックを磨かないといけないので、すぐ即戦力になるのはECの部門だと考えています」

情報発信に携わる草間さんの視野は広いです。自分なりの視点で、積極的に発信しています。

「農業を教えていただいている中で、作物が育っていくプロセスやストーリー、季節を把握できるようになりました。自分が作っていたり、手をかけているので、なおのこと実感が深まります。なので商品を売る時に、自分の携わっている野菜がどんな環境で、どんなふうに育って、どういう人たちが手をかけているのかということを伝えることを意識しています。そうしたら、農園1個だけじゃなくて八幡平という市の環境にも興味持ってもらえるのではないかと考えていますね」

八幡平市に馴染んでいる草間さんですが、長年都会で暮らしてきた経験も発信に役立てています。

「私は都会から来た人です。だからこそ、都会の人がこちらに来た時に、どんなことを伝えたら興味を持ってもらえるのか、どうしたらウケがいい情報を発信していけるのかという視点は、忘れないで持っていようと思っています」

移住者だからこそ感じる八幡平市の魅力

金沢清水

多角的に物事を考えている草間さんに、八幡平市の魅力を聞いてみました。

「八幡平市は水が綺麗だなと思います。水と生きてる地域であることをすごく感じますね。例えば、髪の毛のダメージが少なくなりました。都心に住んでいた時は髪がパサパサしていましたが、こっちに来てからも同じシャンプーとトリートメント使っているのに髪の毛がきしまなくなったんです。その時に、水の綺麗さに気付きました。他にも、長者屋敷公園に清水が湧いているスポットがあるのですが、そのお水を飲んで、“あ、澄んでる”と感じましたね。今でも、通勤途中に水を汲みに行っています(笑)」

地元の人が当たり前と思っている自然の光景も新鮮です。

「歩いていても車に乗っていても、目にする景色が本当に美しいですね。時間がゆっくり流れていることを感じます。来たばかりの頃は、まだ車がなかったので、往復40分くらい歩いて買い物をしたりしていました。歩く中で、景色の美しさにハッとすることも多くて。あとは、色ですね。山の緑と木の緑と葉の緑は全部違うんだなと、八幡平市に来てから学びました。都心に居た時はイライラしがちだったのですが、こちらに来てから心が洗われた感じがしますね」

暮している人の印象についても、驚いたことがあったと言います。

「私は、色々な方に割とすぐ仲良くしていただけるタイプではあると思っています。それもあるかもしれませんが、人への警戒心が少ない方が多いと思います。端的に言うと、とても親切です。私は本来、人への警戒心はない方ですが、最初は緊張していたんですよね、やっぱり。コロナ禍を警戒して、最初の2週間は念の為、自主隔離も行っていました。でも実際は、親切にしてもらうことが多いです。

あと、お子さんにすごく優しいと思います。スーパーで買い物をしていた時に驚いたのですが、買い物をしている時にお子さんが騒いでしまうことってありますよね。都心部のスーパーだと親御さんがすぐ注意して恐縮しながら謝っている光景を見ます。でもこちらだと“もっと遊んでいいんだよー”みたいな感じで。都心では見られない光景だったので、驚きが大きかったです」

障がい児福祉に長く携わってきた草間さんだからこそ、感じることもあると言います。

「私自身どちらかと言うと、学童のお買い物プログラムなどをしている時などに、注意してきた側だったので。子どもは騒いじゃうのが子どもなのに。だからこちらに来て、考え方とか、見方が変わりましたね。本当にお子さんに優しい方が多いです」

初めてずっといたいと思えた街

自分のことを「1つの町にいられない性質」だったと分析する草間さん。しかし今は、考えが変わったそうです。

「私は今まで引っ越しを繰り返してきました。1つの町にいられない性質でしたね。でもここは“ずっといてもいいかな”と初めて思えました」

決め手を伺うと「忙しくないこと」を挙げます。

「空気全体がゆったりしていると言いますか、忙しくないです。忙しいと自分を消耗して暮らしていることを感じます。都心で暮らしていた時はそれが顕著で、毎日肉体疲労以外の疲労が蓄積していたように思います。疲れたというより、削られていくような感じですね。消しゴムがずっとゴシゴシされてなくなっていくような。ここはそれがないです。

神奈川県と聞くと、中華街のイメージを持たれる方が多いんですけど、実は海沿いでなければ風景自体はわりと八幡平と似ているところがあります。だから八幡平の中を歩いていると、祖父母がいた頃の町内に風景がオーバーラップすることもありますね」

「住みやすさ抜群」

移住に対しても草間さんなりの考えを深めています。

「1個の八幡平市という街の中で生きるということ、生活していくということは、八幡平市に住む人たちと触れ合ってゆかりを作って生きていくことだと思っています。それが本来の人の暮らしかなとは思うので。だから今はご縁を大切にして、人に会って、毎日お友だちが増えていく感覚です」

これから移住したいと思っている方へのメッセージを伺いました。

「1回は現地に来て、見学などをすると良いと思います。現地に来て、ピンと来たらずっと住んじゃえばいいと思う。とにかく住みやすさは抜群です」

20代ながらとても落ち着いた印象を受ける草間さん。自分なりにできることを考えながら、八幡平市のゆったりした空気の中で、意欲的に活動しています。

「今後は農業と合わせて増々SNSやECサイトに力を入れていきたいと思っています。軸はひまわりガーデンさんのECサイト運営になると思いますが、例えば保育士資格があるのでベビーシッターをやったりなど、柔軟に対応していきたいです。

またもし農家の方で、“メディアを使いたいけどどうしたら良いかわからない”、“全部帳簿で手書きでつけてたデータを、パソコンでデータ化してほしい”、“ExcelやWordの使い方を教えて欲しい”など、パソコン関連で困っている方がいらっしゃったら、お手伝いしたいです。力になれることがあると思うので。英語も多少できます。気軽にお声がけください」


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お話をきいた場所:高原の珈琲工房 NELCAFE(ネルカフェ)

安比高原の木々を楽しめる窓際の席にて。「ゆっくりと珈琲や食事を楽しめます」と教えてくれた草間さん。深煎りブレンド”ふかふか”は、ガトーショコラと組み合わせることがオススメ。

住所:岩手県八幡平市安比高原165-10
定休日:毎週水・木曜日
営業時間:11:00-17:00

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text : Yuko Matsumoto